福岡市博多区の御笠川でのワニ出没事件が話題になっています。
実は、ワニが目撃された場所はここです。
博多コマーシャルモールがある東光寺のバス停付近を流れる御笠川の堰堤の下です。
ここは、春先から晩秋にかけて小中高校生が川遊びをしたり、釣りに興じるところです。
しかも、ここは夏場にはシーバスが釣れるポイントでもあり、堰堤の下ということで「魚止め」の役目を果たしている知れたるリバーシーバスのポイントでもあるのです。
こんなところにワニがいるなんて!!
上流から流れてきたのかもしれませんが、いずれにせよペットとして飼っていたワニが嫌になって御笠川に遺棄(逃がした)ものと推定されます。
本人はここだったら生きられるだろうと逃がしたつもりでも、第三者からすれば飼育するのが嫌になって捨てたとしか思えません。
遺棄した本人は、「エサ代がかかるし、凶暴になって手に負えなくなったから逃がした」と思っているかもしれませんが、これは立派な犯罪なのです。
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動物の愛護及び管理に関する法律第44条とは?
六法全書で「動物の愛護及び管理に関する法律」を調べてみたところ、第六章罰則のところの第44条に以下のような規定が書かれていました。
「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条
➁愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる虐待を行った者は、五十万円以下の罰金に処 する。
➂愛護動物を遺棄した者は、五十万円以下の罰金に処する。
➃全三項において、「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物を言う。
一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
ペットであったワニを飼うのが嫌になったからとの理由で近所の川に逃がす(遺棄する)のは、「動物の愛護及び管理に関する法律」の第44条の第3項、第4項2号に違反して五十万円以下の罰金を科せられるのです。
ワニは爬虫類ですから立派な法律違反に該当します。
数年前にも御笠川で巨大なカミツキガメだ発見されてマリーンワールドの職員が捕獲したとの記憶がありますが、とても凶暴なカミツキガメを御笠川に遺棄するなど、許しがたい言語道断の所作です。
小中高生が川遊びをして噛みつかれたら、大変なこととなる蓋然性が理解できないのでしょうか?
魚類だったら遺棄しても大丈夫なのか?
「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条には魚類やカエルなどの両生類は規定されていないので、「ペットで飼っていたピラニアやアフリカツメガエルなどを近くの河川や湖沼に逃がしても罪にはならないよね~?」と、思っている方もいるかもしれません。
実は、そう思うこと自体が大間違いです!!!
もっと、重罪な罪になる可能性があるのです。
確かに、「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条には抵触しませんが、他の法律に抵触するのです。
それは、外来生物法という法律なのです。
外来生物法とは?
外来生物法の正式名称は、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」と言います。
随分と長ったらしい名称の法律なので「外来生物法」と略して言われることが多いのですが、この法律ができた背景には外国から日本に輸入されたものの、その繁殖が日本古来の生き物等を絶滅させたり、生態系そのものを変える恐れがある生き物たち、あるいは人や農作物などに被害を与える恐れがある生き物たちを特定外来生物に指定して、それらの繁殖の拡大や被害を防止しましょう!という法律なのです。
特定外来生物として有名なのがブラックバスと呼ばれるオオクチバスやコクチバス、又はブルーギルなど。
随分と昔の話ですが、私も中高生の頃はそこいらの草むらにいるバッタなどをエサにして、ブラックバスやブルーギルなどをよく釣って遊んだものです。
ところが、ブラックバスやブルーギルを釣るのは構わないけれども、それをバケツなどで他の河川や湖沼に放流したり、販売目的で飼育したり、観賞用でも飼育することが禁止されたのです。
「外来生物法」が公布される以前は、釣具屋さんには水槽があって、その中にブラックバスやブルーギルなどが飼われていたことが多かった。
ところが、その飼育自体が法律違反となったので、今現在水槽の中でブラックバスやブルーギルなどを入れている釣具屋さんがなくなったはずです。
「法律は知らない者を助けない!」という言葉もあり、外来生物法もそれに指定されている特定外来生物も知らなかったではすまされない時代になったのです。
特定外来生物に指定されている生き物とは?
私も含めてほとんどの方は、特定外来生物のすべてを知っているわけではありません。
家族で河川などに釣りに行って、釣れた魚を自宅の水槽で飼育などすることは珍しいことでもないと思いますが、その魚が特定外来生物だったら、知らず知らずのうちに法律違反を犯していることとなります。
なので、お子さんが釣れた魚を飼いたい!!などと言うときには、その魚が特定外来生物に指定されていないかを調べる必要があるのです。
環境庁の特定外来生物等一覧が役に立ちます。
⇒特定外来生物等一覧
この環境庁の特定外来生物等一覧は新たな生き物が指定されますので、最新版で確認する必要があります。
外来生物法の罰則
外来生物法で特定外来生物に指定された生き物を飼育したり、輸入したり、取引したり、放ったり、植物であれば植えたり、種をまくことが禁止されています。
一部例外があり、学術研究目的などで主務大臣の許可があれば飼育や輸入や取引も認められないことはないのですが、
個人や法人がペットとしてや観賞用に申請しても許可されることはあり得ません。
外来生物法に対する違反は個人と法人によって違います。
外来生物法33条では驚くほどの重い罰則規定が書かれており、法人というのは会社組織形態をとったペットショップと思えば間違いないです。
違反した場合の罰則規定は以下のように規定されています。
➀ 許可のない飼養や取引に対しては原則として一年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金
➁ 販売、頒布目的の飼養、不正手段による飼養許可の取得や輸入、販売・頒布、放つことに対しては
3年以下の懲役若しくは300万の罰金
法人(会社形態のペットショップなど)
代表者その代理人、使用人など従業員が違反行為を行った場合
➀ 許可のない飼養や取引に対しては5000万円以下の罰金
➁ 販売、頒布目的の飼養、不正手段による飼養許可の取得や輸入、販売・頒布、放つことに対しては1億円以下の罰金
個人にしても法人にしても、恐ろしいほどの額の罰金が科されるので、要注意です。
まとめ
ペットで飼っていた生き物を、飼育が嫌になったからと言ってむやみに放つことが、どれほどの犯罪になるのかということを改めて考えねばなりません。
自宅で生き物を鑑賞目的で飼育したり、ペットとして飼育したりする場合は、飼育に掛かるエサ代などのランニングコストも十分検討せねばなりませんし、大きくなって凶暴で手に負えなくなるなどのことも考えねばなりません。
いくら凶暴だからと言って、今まで飼っていた生き物の始末が出来なくて近隣に放ったりすれば、近隣住民が危険な目に遭うかもしれないことを予見できないのでしょうか?
「動物の愛護及び管理に関する法律」や「外来生物法」のことも知っておくべきです。
またワシントン条約で輸出入が禁止されている生物についても知っておくことが必要です。
知らなかったではすまさせない法律があるということをこの機会に再認識していただきたいと思います。
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